データ消去作業についてくわしく

「データを消す」ということ

データ消去に話を進めます。上記の「HDDはデータ(ファイル)をクラスター群に書き込み、FATで管理する」というポイントが重要です。
 

ふつうのファイル操作で「ファイルを削除する」

エクスプローラーなどのファイル管理ツールで「ファイルを削除する」操作は日常的に行われています。これはこれで、「データを消す」作業の1種とは言えます。しかし、削除の操作をしても、ゴミ箱には残っていて、いつでも復活できます。まだ消えていないので、さらに「ゴミ箱を空にする」操作を行います。ここまでおこなうのも「データを消す」作業の1種。
「ゴミ箱を空にする」までおこなえば、通常のファイル管理ツールなどによってはデータ(ファイル)を回復できません。ですから一見、本当に「消えた」ように見えます。
しかし実は、依然として完全に消えてはいないのです。ここまでの操作をおこなって消えるのは、そのデータ(ファイル)のありかを示すFATの記録だけです。実体としては、消したと思われたデータは元の場所にそのまま残っています。
ですから、市販されているデータ復活ソフトや、プロのPC修理業者、警察の科学捜査部門が持っているデータ復活ソフトを使えば、消したかったデータは読み取られてしまいます。
廃棄された事業系PCの場合は、もっと徹底した方法でデータを消去しなければなりません。
 
「フォーマット」でもデータは消えない
より徹底的な方法として考えられるのは、HDDのフォーマット(初期化)です。「HDDをまっさらの状態にする」というイメージですので、完全に消せる気がします。
しかし実は、これでもデータは消えません。なぜかというと、フォーマットも結局は「FATを全部消しているだけ」だからです。
 
Windowsの機能で完全消去する
Windows2000 SP3以降のWindowsには、「Cipher.exe」というHDDデータ完全消去ツールがそなわっています。
  • ファイルシステムがNTFSであること
  •  ディスク内のファイルがすべて削除済みであること
……という2つの条件を満たしていれば、これでかなり徹底的なデータ消去ができます。
このツールは、ディスクの空き領域に対して、1.すべてのピットに「0x00」を書き込み、2.次にすべてに「0xFF」を書き込み、3.すべてに擬似乱数を書き込む、という動作をおこないます。データの上書きを3回繰り返すことで、データの復活、読み出しはほぼ不可能になります。
 
フリーソフトで消去する
データの完全消去をおこなうフリーソフトはいくつか存在しています。代表的な「Wipe-Out」を簡単に紹介しましょう。
このソフトはCDまたはUSBメモリーにインストールして、そのCD、USBメモリーからブートすることでHDDの完全初期化をおこないます。PCが起動しさえすれば消去できますので、HDDにインストールされているOSまで完全に削除できます。
データ消去の方式は複数の方式から選択できます。簡便な方式から、アメリカ国防省基準のNSA方式まで対応可能です。
ただし、フリーウェアは商用利用できないので、PCリサイクル業者はプロ用のソフトを使います。
 
製品版の完全データ消去ソフト
市販されているデータ消去ソフトもあります。IOデータ社、AOSデータ社、ジャングル社などからリリースされているものが代表的です。やはりCDなどからブートアップできるタイプで、PCが動きさえすれば内蔵・外付けを問わずすべてのHDDを完全消去できます。
 
PCリサイクル業者のデータ消去技法
データ消去の技法には「グートマン方式」、「アメリカ空軍基準」、「アメリカ陸軍基準」など多くのものがありますが、PCリサイクル業者がよく用いるのは「イギリス政府基準」や「NSA方式(アメリカ国家安全保障局基準)」です。
イギリス政府基準では、HDDに「0」を1回上書きします。
NSA方式では、HDD上に擬似乱数を2回上書きし、次に「0」を1回上書きします。
これらの方式では、HDDの寿命が残っているかぎり、引き続き使用できます。
これに対し、HDDそのものを破壊する方式もあります。「磁気破壊」と「物理破壊」です。
磁気破壊では、HDDを強力な磁場にさらし、ディスク上の磁性体を消磁してしまいます。物理破壊は文字通り、ディスクに穴を空けたり粉砕したりして、データの読み取りを不可能にします。